エーミングという言葉を聞いたことはないでしょうか?
エーミングは、自動車の運転支援装置や自動運転装置にとって重要な電子制御装置が正常に作動しているかを確認して、調整する作業のことです。
今後はこのような安全走行機能を搭載した自動車が普及されることが予想され、エーミングの役割はますます重要となります。
今回の記事では、次世代自動車の整備で重要な役割を果たすエーミングについて、作業方法や車検との関係性を交えながら解説していきます。
この記事のポイント
- エーミングとは、車の電子制御装置が正常に作動するように校正・調整作業をすること
- エーミングは「特定整備」の為、認証を受けた工場でないと作業が出来ない
- 2024年10月1日よりOBDが車検の必須項目となり、エーミングが正しく行われていないと車検に不合格の場合もある
エーミングとは?
エーミングとは、車の電子制御装置が正常に作動するように校正・調整作業をすることです。
具体的には、自動車の整備や修理で、レーダーセンサーや音波センサーを脱着、カメラ付きのフロントガラス交換などを行った際に、それらの装置が正常に作動するかを確認して、調整をする作業のことです。
2020年(令和2年)4月1日に道路運送車両法の改正が施工され、国土交通省はこのような電子制御装置の交換や修理を「特定整備」と位置付けました。
したがってエーミングのような特定整備を行うには、地方運輸局の認証が必要となり、一定の要件を満たした認証工場でないと作業が出来ません。
またエーミング作業には、「静的エーミング」と「動的エーミング」が存在します。
静的エーミングは、車両を静止させた状態で行うエーミング作業で、特定整備の対象となります。反対に動的エーミングは、車両を走行させた状態で行うエーミング作業で、こちらは特定整備の対象外となります。
またエーミング作業自体を自動車が自動で行う自動エーミングもあり、こちらも特定整備の対象外となります。
種類 | 概要 | 特定整備対象か否か |
|
自動車の前方等にターゲットを設置し、車両を正確に正対させた状態で、スキャンツールを操作し、ターゲットの認識状態を確認しながら、カメラ等の調整を行う手法。 | 対象 |
|
一定の条件下で自動車を走行させることで、自動的にカメラ等を調整する手法。(スキャンツール等で自動車に対し、動的エーミングの実施を整備作業者が命令することで行われるエーミング) | 対象外
(ただし、カメラの交換等を伴う場合は対象) |
|
エーミング作業の実施にあたり、使用者や整備事業者が介在せず、自動車が自動でカメラ等のわずかな偏心を補正する機能。 | 対象外
(ただし、カメラの交換等を伴う場合は対象) |
出典;国土交通省 電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習
このようにエーミングは、車の安全走行のために重要な役割を担っていて、高度な専門技術を要した認証工場でないと作業ができない自動車整備となります。
エーミングの作業内容
エーミングを行うには、専用の工具や作業環境が必要なので紹介していきます。
エーミングに必要な工具やツール
- 調整前作業
・水準器:床面の水平度を確認する - 車両中心位置の測定
・水糸:車両中心を出すために下げ振りを下げる - ターゲットの位置を決める
・整備書:ターゲットの位置を確認する
・メジャー:ターゲットを置く位置を計測する
・デジタルプロトラクター:ターゲットの向きや角度の正確さを計測する - エーミングの実施
・ターゲット:車のカメラに読み込ませるための標的
・リフレクター:レーダーの音や光の波を反射させるツール
・スキャンツール:故障コードを検出する外部診断機。指示にしたがってエーミングを実施する - その他の工具・ツール
・デジタル角時計:バンパーなどに装着されているセンサーの取り付け角度を計測する
・レーザー距離計:対象物との距離を計測する
・補助金具:デジタル角時計とレーザー距離計を組み合わせて使用する
エーミングの作業環境
エーミングを実施するには、適切な作業環境が必要です。
- 水平な場所
電子制御装置の点検作業場について、自動車メーカーが作成する整備要領書には「水平」な場所で作業を行うことが求められる場合が多いです。ただし全ての認証工場で完全に水平な場所を用意することは難しいです。したがって水準器等を用いて、車両とターゲットを正対させる「疑似的に水平な」環境を用意して作業を実施します。 - 作業場の広さが基準を満たすこと
対象自動車 | エーミング作業場の基準(奥行×間口) |
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16m(うち屋内7m)×5m |
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6m(うち屋内3m)×2.5m |
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5.5m(うち屋内4m)×2m |
エーミングが必要なASV車両
エーミングが必要となる先進安全自動車は、ASV(Advanced Safety Vehicle)と呼ばれ、先進技術を使用してドライバーの安全運転を支援するために、以下のような安全走行装置が搭載されています。
- 前方障害物衝突被害軽減ブレーキ
前方の障害物を予測して警報し、衝突被害を軽減するために制動制御する装置 - ペダル踏み間違い時加速制御装置
発信時や低速走行時に障害物などに対してシフトレバーやアクセルペダルの誤操作によって衝突するおそれがある場合、急発進や急加速を制御する装置 - レーンキープアシスト
走行車線の中央付近を維持するよう操作力を制御する装置 - 車線逸脱警報装置(LDW)
車線から逸脱しそうになった場合、ドライバーに警報する装置 - 後退時後方視界情報提供装置(バックカメラ)
後退時、車両後方の様子をカメラで撮影し、車内のモニターに映し出す装置 - 後側方接近車両注意喚起装置
走行中に後側方車両を検知し、その情報を提供する。その際、車両変更のためのウインカー操作を行うと、より注意を喚起する装置。
参考:自動車総合安全情報
などです。これらの安全走行装置を正しく作動させるためには、電子制御装置を正常に作動させることが重要です。
このようなASV車両の修理では、ほとんどの場合でエーミング作業が必要となります。具体的には下記のケースがあります。
- バンパーやグリル交換(センサーが装着されている為)
- フロントガラス交換、脱着(ガラスにカメラやセンサーが装着されている為)
- ドアミラー交換、脱着(ミラーにカメラが装着されている為)
- フレーム修正を行う鈑金塗装
などです。このようにASV車両の修理では、エーミング作業が伴うことは覚えておきましょう。
エーミングと車検の関係とは?
今後はエーミングが正しく行われていないと車検に不合格となる可能性があります。
これは2024年(令和6年)10月1日より「車載式故障診断装置(OBD)」が車検の必須項目となると国土交通省が発表しているからです。
OBDとは、検査時にスキャンツール(外部故障診断機)を自動車に接続して、各種装置の故障の有無や作業状況を読み出すことで、装置が正常に作動しているかを点検することです。
これにより人の目に見えない自動車の故障や不具合を検知できるようになります。
したがってスキャンツールを使用して不具合が検知された場合やエーミングの対象車両に関わらずエーミング作業が行われていない場合には、車検が不合格となります。
つまりエーミングと車検の関係は、非常に重要なものとなっていきます。
ちなみに国産車では、2021年(令和3年)10月1日以降の新型車はOBDの対象で、2024年(令和6年)10月1日より検査の必須項目となります。
また輸入車では、2022年(令和4年)10月1日以降の新型車はOBDの対象で、2025年(令和7年)10月1日より検査の必須項目となります。
エーミングの費用相場
エーミングに発生する費用ですが、おおよそ6,000円~20,0000円ほどが相場となります。
エーミングの費用に関しては、作業する場所によって発生する費用が大きく変わります。
例えば、フロントカメラのエーミングとなるとターゲットの配置や作業の項目が多くなる為、費用も高くなるケースが多いです。
反対に、バンパーのセンサーのエーミングとなると作業の項目が比較的少なくなる為、費用も安くなるケースが多いです。
エーミングの費用に関しては、作業を依頼する業者や工場によっても変わってくるので、事前に調べることをおすすめします。
エーミングが出来る整備工場
エーミングが出来る整備工場は、地方運輸局の「認証」が必要です。
これまでの自動車整備は、自動車のエンジンやブレーキなど保安上重要な装置を取り外して行う整備を道路運送車両法で「分解整備」と位置付けていました。
この分解整備を行う為には、地方運輸局の認証が必要となり、設備や整備士が一定の要件を満たさない工場でないと認証工場と認められませんでした。
しかし自動ブレーキに用いられる前方監視用のカメラやレーダーの軸の調整など、必ずしも「取り外して行う」ことを要しない作業は、分解整備の定義に含まれず、認証を受けない工場でも実施可能となっていました。
例えば、カメラ付きのフロントガラスを交換する場合に、今までの制度だと個人の方でも作業しても良いことになっていたのです。
そこで先述した道路運送車両法の改正により、カメラやレーダーの調整のようなエーミング作業は「特定整備」と定義されたことで、国土交通省の認証を受けた整備工場でないと作業が出来なくなりました。
普段メンテナンスを依頼している整備工場であっても、特定整備の認証を受けていないとエーミングの作業は出来ないということです。
またエーミングを行うには国が定めた基準を満たす専門知識などが必須のスキルとなります。
エーミングの資格は、国が行う電子制御装置整備の整備主任者等資格取得講習に参加をして、試験に合格する必要があります。
整備やメンテナンスを依頼する業者が、エーミング作業に対応した整備工場かどうかは、事前に確認をしておくようにしましょう。
まとめ
エーミングは次世代自動車が安全に走行する為に、今後ますます重要となります。
またOBDが車検の必須項目となることで、エーミング作業が正しく出来ていないと車検にも影響を及ぼします。
エーミングは、設備や環境が整った整備工場に依頼をするようにしましょう。
当店のアップル車検では、特定整備の認証も取得して、エーミング作業にも対応しています。
設備や環境、資格を持ったメカニックも揃っているので、次世代自動車の整備も安心してお任せください!
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